最終更新日:2022年12月01日
高級馬具製造工房としてスタートしたエルメスは、創業時から革製品に対して強いこだわりを持っており、高い品質のアイテムを世に送り出しています。革の種類は代表的な牛だけでも幅広く、牛以外も含めると多種多様です。
この記事では、エルメスの歴史や革へのこだわりについて紹介した上で、使用されている革の種類を細かく分類して解説します。革以外の素材の種類や、エルメスの革製品を品質を保ちながら長く使うためのコツにも触れるため、ぜひ参考にしてください。
エルメスは世界中に愛好者を抱える人気高級ブランドです。1837年に高級馬具製造の工房として創業し、20世紀以降はバッグ・時計・ファッションなど多彩なアイテムを展開しています。特に革製品に対するこだわりの強さと品質の高さは広く知られています。
エルメスの特徴は、フランス有数のタンナー(製革業者)などから取り寄せる上質な革をさらに厳選して製品に使用していることです。取り寄せた革は、専門の保管部門が温度・湿度管理の中で保管するなど徹底した管理が施されています。
革へのこだわりは素材選びや保管に限りません。バッグの場合、エルメスでは1人の職人が1つの革製品を最初から最後まで責任をもって仕上げることが一般的です。完成したバッグには職人番号や製造年などを刻印することで、破損した場合にも製造した職人自身が修理を請け負うようになっています。
エルメスにはバラエティーに富んだ革製品がそろっています。一口に革といっても、牛や水牛、ワニなど種類はさまざまです。アイテムの価値や扱い方をより良く理解するためには、革自体の特徴を知ることが大切です。
ここでは革の種類別に特徴を紹介します。
革の中でも牛革は最も種類が豊富です。以下では、牛革を【加工なし】【型押し加工】【スムース】【その他】に分類しています。
【加工なし】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| エバーカラー | やや硬めでマット感がある。財布など小物類に使用。 |
| トゴ | 目が大きく、適度に柔らかい。正式名称「ヴォークリスベトゴ」。 |
| トリヨンクレマンス | 柔らかい質感が持ち味。使用アイテムは幅広い。 |
| ネゴンダ | 目が大きめ。主にガーデンパーティに使用。 |
| フィヨルド | 柔らかくマット感がある。バッグや小物類などに使用。 |
【型押し加工】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| アルデンヌ | 硬めで、触り心地に重みがある。現在は廃盤。 |
| ヴァッシュトレッキング | 硬めでややマット感がある。主にバッグに使用。 |
| ヴァッシュリエジエ | 光沢感あり。バッグなどに使用されていたが、現在は廃盤。 |
| ヴォーエプソン | 細かな型押しが特徴的。使用アイテムは幅広い。 |
| ヴォーグレネ | 硬めでマット感があり、傷が目立ちにくい。現在は廃盤。 |
| カントリー | 目が粗めで、適度に硬い。主にガーデンパーティに使用。 |
| クシュベル | 光沢感と張りがある。現在は廃盤。 |
| グランアッシュ | 整然と型押しされた織物のような模様が持ち味。 |
| リセ | クシュベルに似た光沢感を持つ。現在は廃盤。 |
【スムース素材】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ヴァッシュ | ヌメ革。使い込むほどに味わいが出る。 |
| ヴァッシュハンター | やや光沢感があり、滑らかで硬めの質感。チャームなどに使用。 |
| ヴォーデルマ | 柔らかく滑らかな薄手の革。 |
| ヴォーロデオ | 血筋やシワが持ち味で柔らかい。ドゴンなどの小物類に使用。 |
| エバーカーフ | 柔らかくマット感がある。 |
| キュイールアブリッド | 硬めで滑らかな触感が特徴的。 |
| シッキム | 柔らかく艶感がある。 |
| スイフト | 柔らかく滑らかな触り心地が特徴的。発色が良い。 |
| ソンブレロ | 滑らかで張りやマット感がある。 |
| タデラクト | 艶加工による光沢感があり、艶が経年変化する。 |
| ボックスカーフ | 硬めで艶感がある。 |
| ボックスネパール | ボックスカーフよりもマット感が強い。 |
【その他】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ヴォートロイカ | 雄子牛の毛を染色した毛並みが特徴的。いわゆるハラコ。 |
| ヴォーベロア | ヌバック。表面を滑らかに起毛加工している。 |
| エバーソフト | 血筋やシワを生かしたベロア風の革。 |
| グリズリー | ヌバックやスエードと呼ばれる革。 |
種類の名称に使われている「ヴォー」は「1歳までの雄子牛」を、「ヴァッシュ」は「雄牛」を、それぞれフランス語で意味します。
エルメスでは水牛革を使用したアイテムも多彩です。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ダルメシアン | 表面の凹凸を生かして白黒のダルメシアン柄に染色。現在は廃盤。 |
| ブッフル | 耐水性が高い。ガーデンパーティなどに使用。 |
| ブッフルガラ | 目が小さく、光沢感を持つ。小物類に使用。 |
| ブッフルシンドゥ | ネゴンダに似た質感。ガーデンパーティのみに使用。 |
| ブッフルスキッパー | 耐水性があり、やや光沢感がある。 |
| ポンディシェリ | 柔らかさが特徴的。小物類に使用。 |
ブッフルスキッパーと染色前のダルメシアンは同じ素材です。ダルメシアンの白黒カラーは「101」、黒白カラーは「102」と呼ばれています。
ヤギ革の種類は次の通りです。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| アストラカン | 品種改良によって触感を向上させた子ヤギの巻毛皮。 |
| ヴィブラート | 色違いのヤギ革を重ねて貼り合わせ、裁断した素材。現在は廃盤。 |
| ヴィブラート・スニップ | ヴィブラートの幅や色に変化を加えた革。現在は廃盤。 |
| コロマンデル | 柔らかく光沢感がある。 |
| シェーブル | 軽やかな風合いで、コロマンデルより目が細かい。 |
| シェブルミゾル | 適度な目の大きさと柔らかさが特徴。バーキン25などに使用。 |
巻毛皮や多色使いの革など、ヤギ革には個性的な素材がそろっています。
ワニ革は革の中でも希少性が高い種類であり、高級感あふれる素材です。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| アリゲーター | ミシシッピ川流域に生息するアリゲーターをリセ仕上げしている。 |
| アリゲーターマット | アリゲーターをマット加工した革。 |
| ポロサス | 東南アジアやオーストラリアのクロコダイルをリセ仕上げしている。 |
| ポロサスマット | ポロサスをマット加工している。 |
| ポロサスリセ | ウロコが均等で、光沢感がある。 |
| ニロティカス | ナイル川原産のクロコダイルをリセ仕上げした革。 |
| ニロティカスマット | ニロティカスをマット加工した革。 |
ワニ革はウロコの大小や斑紋など独特の模様を楽しめる素材で、バッグや小物類に多く使われています。リセ仕上げとは斑の部分をめのうで磨いてツヤを出す加工を指します。
その他の革は次の通りです。
【エミュー・オーストリッチ】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| エミュー | オーストリッチと似ているが、斑点がより細かい。 |
| オーストリッチ | ダチョウ革。水玉のような斑点が特徴的で、発色が良い。 |
【豚・鹿】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| シカ | 柔らかい鹿革。帽子などに使用。 |
| ポルク | 豚革。ざらついた風合いが特徴的。 |
【リザード】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| リザード | トカゲの革。光沢感があり、小さく均等なウロコが持ち味。 |
| リザードナチュラ | 加工を極力抑え、リザード模様を生かした革。 |
斑点やウロコなど、牛革などとは異なる独特の風合いを持っている点はその他の革ならではの特徴です。
エルメスには革以外の素材を使ったアイテムも多彩です。
【キャンバス】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| トワルアッシュ | 2色の糸を平織りした、エルメスの代表的なキャンバス。 |
| トワルカザック | 縦ラインが特徴的な布。 |
| トワルシェブロン | ヘリンボーン織りした布。 |
| トワルジーン | 丈夫なデニム系キャンバス。 |
| トワルGM | トワルアッシュよりも目が粗め。 |
| トワルソーアッシュ | コットンとウールの2色使い。細かく織り込まれたHロゴが特徴的。 |
| トワルポタモス | 川をイメージしたラインが入った、丈夫で軽量な布。 |
| ナイロンキャンバス | エールバッグなどに使用。 |
【ウール】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ツイード | ウール100%の素材。 |
| フェルト | 主に小物類で使用。 |
| ロカバール | 暖色系が持ち味のウール。 |
【その他】
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| クランシュバル | 馬の尻尾を織った素材。 |
| パナマ | パナマ草を織った素材。 |
| アマゾニア | ゴム樹脂加工素材。防水性や耐久性が高い。 |
革以外の素材は、トートバッグなどカジュアルなラインに多く使用されています。
エルメスの革製品は時間の経過とともに艶やしなやかさが増し、使い込むほどに美しく変化します。美しさを保つためには丁寧に取り扱い、こまめに手入れをすることがポイントです。
革は湿気や乾燥、直射日光などに敏感です。濡れたまま放っておいたり、直射日光に長時間当て続けたりすると、革はダメージを受けます。バッグの場合、物の詰めすぎも禁物です。型崩れする可能性があるためです。
使い終わったバッグは布で汚れや水分を拭き取り、風通しの良い場所で休ませた後、収納袋に入れて休ませてください。バッグの状態を良好に維持すると、長く愛用できるうえ、買取査定の際にも高値がつきやすくなるため、大切に取り扱うことをおすすめします。
エルメスの革の種類は、牛・水牛・ヤギ・ワニなどがあり、牛だけでも加工の有無や素材の質感により細かく分類されます。また、トカゲやオーストリッチなどの鳥類の革の扱いがある他、革以外の生地も多数使用されています。
エルメスの革製品を使う際に、品質を保つためには、丁寧に扱い手入れをしっかり行うことが大切です。保管する際も湿気・乾燥・直射日光・型崩れに注意しましょう。
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