最終更新日:2024年08月21日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大やウクライナ危機を契機に金価格は高騰を始めました。息の長い金価格の上昇もあり、所有する金の売却を検討している方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、今後の金価格の動向について詳しく解説します。直近5年間の金価格の推移から金価格が変動する要因、短期的・長期的な金価格の予想までまとめているため、金の売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
今後の金価格はどのように推移すると予想されるのでしょうか。現状では、短期的な予想と長期的な予想で異なる動きが想定されます。短期的には急落する可能性がある一方で、長期的には上昇基調が維持される見通しです。
ここからは、短期的な予想・長期的な予想をそれぞれ詳しく解説します。
金価格は紛争や天災などによる悪影響を受けにくく、有事の際に価格が上昇する傾向があるため、金は世界的に安定資産とみなされています。不安定な国際情勢などに反応して下落する傾向にある、通貨や株式とは対照的な存在といえるでしょう。
近年ではウクライナ情勢や新型コロナの拡大が金相場に大きな影響を与えました。
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ軍事侵攻は、いまだに収束の見通しが立っていません。ただし両国の国内情勢や他国からの働きかけによって、状況が一転し、和平への道が開かれる可能性もあります。
金価格はロシアのウクライナ侵攻後に急騰して以降、上昇トレンドで推移しています。しかし、近い将来にウクライナ情勢が落着きを見せれば、金価格は短期的に急落する可能性もあります。
長期的には、金価格は上昇傾向が維持される見通しです。ジュエリー分野のみならず、さまざまな産業分野で金需要が高まっているためです。
需要の高まりを背景に、金は投資対象としても注目される存在となりました。株式投資の場合、株式の発行元が経営破綻すれば、株式自体の価値はなくなり投資家に損失をもたらすリスクがあります。
金は現物そのものに価値がある点が、株式との大きな違いです。金には世界各国で現金などへ転換できる信用力の高さもあります。信用力の高さは、長期的に価格を安定させる重要なポイントです。
また、金の採掘量には限りがあり、希少性が高いという点も金価格を上昇させる要因の1つです。長期的な需要をカバーできる量を供給できなければ、金価格の上昇は維持される可能性があります。
ただし株式には配当、債券には利息があるなど、株式や債券は保有するだけでリターンが得られます。しかし金は保有するのみではリターンが得られません。
金取引や金投資を検討している方は、金価格が変動する要因についての知識を深めることも大切です。金価格が上昇、または下落する主な要因5つを簡潔にまとめました。
金価格の一般的な傾向
金価格上昇 | 金価格下落 | |
---|---|---|
金の需要・生産量 | 需要に対する供給量や生産量が少ない | 需要に対する供給量や生産量が多い |
米ドルの価値 | ドル高になる | ドル安になる |
経済不安や金融不安 | 経済・金融の先行きに不安要素がある | 経済・金融の先行きが明るい |
地政学 | テロ・戦争・政治的緊張などが起きる、または発生する可能性が高まる | テロ・戦争・政治的緊張などがない、または発生する可能性が低い |
世界の金利 | 利下げされる | 利上げされる |
以下では、金価格の変動を予測するポイントも合わせ、5つの要因について詳しく解説します。
一般的にモノの価格は、需要増加・供給減少で上昇し、需要減少・供給増加で下落します。これは金価格も同様です。金の需給バランスは、主に金の鉱山生産量・工業用需要・宝飾品の売買量などの影響を受けます。
全世界での金の産出量は、2021年は3,090トン、2022年3,100トン、2023年3,000トンでほぼ横ばいの推移ですが、2023年は若干減少しました。2024年も産出量が減少する場合は、金価格高騰の要因となり得るでしょう。
米ドルの相場と金の相場は、一般的に逆相関にあると言われています。そのため、米ドルの価値が上昇すると、金価格は下落する傾向です。対して米ドルの価値が下落すると、金価格は上昇します。
金価格を予想する際には、金価格の相場とともに、基軸通貨である米ドルのレートの確認が必要です。なお、ドルインデックスを見れば、ドル円などの通貨ペアのレートを見ずとも直接ドルの価値の確認ができます。
2024年の米国は、物価上昇と米ドルの価値の上昇が同時に発生する状況です。ただしインフレ対策として既に政策金利の引き上げが行われており、金価格の極端な上昇・下落要因が生じる可能性は低いと見られています。ただし2024年9月に米国では利下げが見込まれており、その影響を注視する必要があります。
金は「有事の資産」と呼ばれており、経済不安や株価先行き不安な状況では価格が上昇する資産です。一方、経済不安や金融不安が解消されると、株式や債券などの金融商品のリスクが低下します。安定した資産である金から高い利益率が期待できる株式や債券などに資金が流入し、金価格は下落傾向となることが一般的です。
2024年上期までの金価格の高騰は、コロナショック・ウクライナ危機によるリスク回避を契機にスタートしたとも考えられます。しかしその後、金は本来逆相関のドルとともに上昇しています。
地政学リスクとは、テロ・戦争・大企業の倒産などの影響により、特定地域や世界の状況が不安定となることです。例えば、テロや戦争が発生すれば、先行きの不透明感から金が買われ、金価格が上昇します。反面、テロや戦争による影響がなく地政学リスクが低下すると、安全資産である金から他の資産へと資金が流出し、金価格は低下しやすくなるでしょう。
2024年前半はウクライナとイスラエルが地政学リスクの中心テーマです。特にアメリカと関係が近いイスラエルが、ガザ地区での戦闘行為をいつまで続けるか、イランとの対立がエスカレートするかが大きな注目点といえるでしょう。
米国の金利とは、米国のFRBがFOMCで決定する政策金利のことです。政策金利は、民間銀行の預金金利や貸出金利に影響します。
米国の政策金利が低い時は、高いリターンを求めて米国から資金が流出します(ドルを売って他の通貨や資産を購入する)。つまり通貨ドルの価値が下落し、逆相関の関係にある金価格は上昇しやすくなります。反対に政策金利が高い時は米国に資金が集まり、ドルが買われるため通貨ドルの価値が上昇して金価格は下落しやすくなります。。
2024年9月には米国の利下げが予想されており、これまで上昇が続いた金利環境は大きく変化する可能性があります。
金価格の相場推移からは、金取引や金投資に役立つヒントを得られます。そこで、ここでは過去における相場推移について紹介します。
以下は、2019年から2023年まで5年間における金価格の相場です。
金価格の相場 | |
---|---|
2019年 | 4,918円/グラム |
2020年 | 6,122円/グラム |
2021年 | 6,402円/グラム |
2022年 | 7,649円/グラム |
2023年 | 8,834円/グラム |
表を見ると、金価格は2019年から右肩上がりで上昇している状況は明らかです。特に、2022年と2023年はいずれも前年から約1,200円/グラムも上昇しており、相場の好調さが顕著に表れています。
2024年に入っても金価格は高値水準を維持しており、7月時点の金価格は12,185円/グラムで推移しています。
金価格が年々右肩上がりに上昇しているのには、大きく2つの理由があります。1つは「金の需要が高まったため」、そしてもう1つは「金が投資商品として投資の対象となったため」です。
もともと、金の購入は資産として所有することが主たる目的でした。しかし近年では、スマホやパソコン、精密機械などの素材として工業利用されるケースが増え、さまざまな分野で金の需要が高まっています。
また中国政府なども、金の保有量を増やしており、各国政府も金の有力な買い手となっています。
要するに、金の需要が高まったことから、金が投資の対象となり取引が活発となったため、金価格が上昇を続けているということです。
金価格は、2010年には平均3,477円/グラムで取引が行われていました。現在の金相場と比較すると、金の価値が長期的に上昇していることが分かります。
金売買をする前には、国内外で起きているさまざまなトピックを注視することが重要です。2023年現在で金価格に影響を及ぼす要因としては、世界的に拡大した感染症の状況や国際情勢などがあります。
以下では注目すべき6つのトピックを取り上げ、それぞれについて解説します。
2024年8月時点において、ウクライナ情勢の見通しは依然として不透明です。今後の展開については、専門家の間でもさまざまな意見が出ています。今後も長期間にわたって不安定な情勢が続く可能性も否めません。
ウクライナ情勢は金価格を押し上げた要因の1つであり、今後の展開次第で上昇、または下落へとつながるでしょう。
円相場の動きは、注目すべき重要なトピックです。金価格は基本的にドル安で上昇し、ドル高で下落します。
ただし足元ではドル高と金の上昇が同時に進んでいるため、本傾向は絶対視すべきものではありません。
2024年の為替市場ではドル高が進み、8月半ばのドル/円レートは150円を前後する状態です。
金価格は、世界各国が行う政策金利の影響を受けます。特に影響があるのは、金価格と密接な関係があるのはアメリカの政策金利です。アメリカの中央銀行にあたるFRBは2022年から2023年にかけて、物価上昇を抑えるために5.5%まで利上げを行いました。しかし2024年9月から利下げが予定されています。
一般的に、政策金利が上がると金価格は下落する傾向にあります。したがって、アメリカが利下げに転じると、金価格は上昇する可能性があります。
中国とインドは、世界で最も人口が多い国の上位2カ国です。両国の人口を合わせると約28億人に昇ります。アジアの新興国である中国とインドでは、経済の急速な発展を受けて、産業分野やジュエリー分野における金需要の高まりが予想されます。
特にインドでは、金は古くから装飾や蓄財の手段として人々の生活に根付いた貴金属です。ただし中国の経済状況が更に悪化すれば、金を購入する意欲や資金が人々からなくなり、需要が減る可能性も含んでいます。
北朝鮮や中東、中国といった国々による軍事動向も、金価格には影響を及ぼすトピックです。
例えばいずれかの国が何らかの理由で軍事行動を起こせば国際情勢の緊張が高まり、金価格は上昇すると見込まれます。あるいは、近隣諸国と平和で友好的な関係を保とうという姿勢を貫けば、金価格は下落する可能性があるでしょう。
2024年における金価格の予測では、多くの専門家が以下の理由から価格上昇を見込んでいます。
・米国の利下げ
・地政学リスク
・需給バランス
また経済動向が金価格に与える影響も顕著です。例えば、不安定な経済状況やインフレの期待が高まると、多くの投資家がリスクを避けて安全な資産である金へと移行します。これにより金価格は上昇する傾向にあります。
逆に、経済が安定している時や株式市場が好調な場合は、リスク資産への投資が増え、金への需要が低下し価格も下落することがあります。このように、世界的なマクロ経済の変動も直接的に金価格を左右する重要なファクターです。
「専門家が推奨する金投資アプローチ」
専門家が推奨する金投資アプローチには、様々な戦略が存在します。長期的な保有を目指す場合、物理的な金(ゴールドバーまたはコイン)の購入や、金ETFへの投資が一般的です。市場動向を見極めつつ分散投資を行うことでリスク管理が可能です。また、短期取引では先物取引やオプション取引も利用されることがあります。どの方法を選択するかは、個々の投資目標とリスク許容度によって決まります。
「最新の相場情報を活用した買取戦略」
最新の相場情報を活用した買取戦略では、市場動向に敏感であることが重要です。特に金や銀などの貴金属は日々価格が変動するため、リアルタイムで価格をチェックし、適切なタイミングでの売却が利益を最大化します。また、季節によって需要が変わる商品もあるため、その時期ごとのトレンド把握も必須です。これらの情報を基に柔軟な対応策を立てることで、効率的かつ効果的な買取の展開が可能です。「投資家必見!効果的な金取引テクニック」
投資家必見!効果的な金取引テクニックとしては、まず市場のトレンドを理解することが重要です。金価格は経済状況や政治的イベントに敏感であり、これらの要因を分析することで適切な売買タイミングを見極められる可能性が高まります。また、リスク管理も欠かせません。ポートフォリオ内での金の割合を調整し、他の資産とバランス良く配置することでリスクを分散させます。
金を売る際は、国際情勢や相場・市場などの情報を確認してから行動に移すことが大切です。2024年は、金価格が史上最高値を更新しており、歴史的にも高騰しているタイミングです。7月時点の店頭買取価格も12,000円/グラムを超える状態で推移しています。
ただし、金価格の高値水準は必ずしも安定して続くとは限らないため、注意が必要です。1980年の日本では、1グラムの金価格が4か月の間で6,495円から3,645円となり、約3,000円もの下落を記録しています。
2024年後半も高価買取を狙える売り時である可能性は高いといえます。今後の情勢に不安がある、売るかどうか迷うなどの場合、まずはプロによる査定をおすすめします。。
金価格の相場は、直近5年間は緩やかな上昇トレンドを描き、さらにコロナショックからウクライナショック、中国の景気不安等により高騰しています。短期的には、上昇が続いた金価格相場はいったん急落する可能性があるものの、長期的には上昇が維持される見通しです。
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