最終更新日:2021年09月30日
世界各地の歴史的遺物に黄金が使用されているように、金は古来より世界中の人々から愛されてきました。現在も、資産や装飾物の材料、電子機器のパーツなど、さまざまな用途で金が求められています。
金の産出国はアジアや欧米に点在しており、産出量や埋蔵量もさまざまです。消費需要および投資需要に対して供給量が少ないことから、今後も一定の資産価値が見込まれます。
当記事では、金の主な産出国について、年間推移や産出量・埋蔵量ランキングとともに紹介します。
金は、比較的幅広い地域で産出する貴金属のひとつです。陸続きとなっている中国やロシア、欧州やアフリカはもちろん、遥か南方のオーストラリアなどでも金を産出しています。
ここでは、2020年における金の産出量・埋蔵量のデータをもとに、トップの10か国について紹介します。
2020年、金の鉱山産出量は全世界で3,200tとなりました。過去数年の年間推移を見ると、2018年~2019年が過去最大量の産出量(3,300t)となっており、2020年は若干減少を見せたものの、下記のとおり多くの国々で金が産出されています。
●金の産出量ランキング(2020年)
順位 国名 産出量 1 中華人民共和国 380t 2 オーストラリア 320t 3 ロシア 300t 4 アメリカ合衆国 190t 5 カナダ 170t 6 ガーナ 140t 7 インドネシア 130t 8 ペルー 120t 9 カザフスタン/メキシコ 100t 10 南アフリカ/スーダン/ウズベキスタン 90t 全世界 3,200t
出典:U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2021」
金の産出量トップ10にランクインした国の多くが、中華人民共和国(以下、中国)をはじめとするアジアでした。1位の中国は世界シェアの11.9%を占める産出量を誇っており、4位の米国の2倍を記録しています。
中国は2007年に世界1位の産出量を記録して以来、トップを維持してきました。近年は減少傾向にありつつも、2020年も2位のオーストラリアに60tの差を付けています。
2位のオーストラリアと3位のロシアも、近年ゆるやかに産出量の増加を見せている国です。いずれの3国も国土面積が広い点が共通している一方で、ロシアに次いで広いカナダよりも中国やオーストラリアが多くの金を産出している点が特徴的と言えます。
下記は、2020年時点の世界各国の金埋蔵量ランキングです。産出量で他国に圧倒的な差を見せた中国が、意外な位置にランクインしています。
●金の埋蔵量ランキング(2020年)
順位 国名 埋蔵量 1 オーストラリア 10,000t 2 ロシア 7,500t 3 アメリカ合衆国 3,000t 4 スーダン/ペルー 2,700t 5 インドネシア 2,600t 6 ブラジル 2,400t 7 カナダ 2,200t 8 中華人民共和国 2,000t 9 ウズベキスタン 1,800t 10 アルゼンチン 1,600t 全世界 53,000t
出典:U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2021」
埋蔵量は、各国の地中にある金の総量のうち、現代の技術および資本で採掘できる金のことです。そのため、将来的には技術の進歩や採掘コストの解決により、上記ランキングとは異なる順位や埋蔵量となる可能性もあります。
世界の総埋蔵量53,000tのうち、1位のオーストラリアのみで10,000tを有する状況です。約18%の量にあたり、埋蔵量のみで見ると中国の5倍であることから、将来的にオーストラリアが産出量においても1位となる可能性は高いと言えます。オーストラリアは鉛やウラン生産量なども豊富なため、確認埋蔵量よりも多くの金やその他資源が眠っていても不思議ではありません。
前述のとおり、金の産出量は必ずしも埋蔵量に比例するものではありません。金の産出量が左右される理由として、採掘技術や地下資源への取り組みなど各国の情勢が挙げられます。たとえば、技術的に困難な場合や、政策の影響を受ける場合などです。
ここでは、主な金産出国である、中国・オーストラリア・ロシア・アメリカ・南アフリカについて、金採掘の歴史や現代の状況を解説します。
中国の金採掘事情が大きく変動した最大の理由は、近年の目まぐるしい経済成長です。資源量に恵まれ、多くの金埋蔵量がありつつも、長年、中国は技術的・環境的な理由で金を産出することが困難でした。
近年は、政府が中心となって多くの分野に技術や予算を投じており、金産業への投資も積極的に行われています。
代表的な金鉱脈および採掘場は、新疆ウイグル自治区・内モンゴル自治・区湖南省・山東省・福建省です。2010年に発見された新疆ウイグル自治区の金鉱脈は広範囲と言われており、2014年に100tの埋蔵量を記録
しました。
出典:人民網日本語版--People's Daily Online「新疆、100トン級大型金鉱が発見」
また、中国とキルギスの国境付近に発見された薩瓦亜尓頓金鉱は、金脈を表す「天山山脈中央アジア黄金ベルト」に位置していることから、現在も調査が進められています。
オーストラリアにおける金採掘の歴史は、1851年のイギリス人による砂金の発見がはじまりです。オーストラリアは、金脈の噂が囁かれつつも、本格的なゴールドラッシュを迎えるに至らない状態が続いていた中で、外国人による砂金発見の功績が呼び水となりました。
やがて、イギリス人やアメリカ人、中国人など世界中から採掘者が訪れ、ゴールドラッシュを迎えたオーストラリアでは1858年に69kgの金塊も発見されています。
出典:Mirage News「Australia Post marks 150 years since discovery of the Welcome Stranger」
オーストラリアの特徴は、当時より金の埋蔵量が多いことです。配分が比較的スムーズに行われたことから大きな争いも生まれず、ビクトリア州では大規模な金鉱が発見され、国内の金採掘はますます賑わいを見せました。
現在は当時の金鉱は閉山され、西オーストラリア州のスーパーピット鉱山が国内最大の露天堀金鉱山として知られています。
ロシアにおける詳しい金採掘の歴史は、明確な資料が残っておらず、不明瞭な点が多々あります。
近年の情報によると、2005年にロシア政府は金産業発展のための国家政策に取り組んでいました。政策の目的は、金鉱山生産を増やすための新鉱床探査を国と中央銀行主導で行い、金保有量の10%積み増しを目指すことです。
出典:JOGMEC金属資源情報「2005年ロシアの金鉱山生産動向」
また、シベリア・極東地域で鉱物資源の開発を進めるためにインフラ整備にも力を入れる一方で、国内企業による金の国外持ち出しを厳しく規制する計画も発表されています。
現在、ロシアの主な金鉱は、カムチャッカ半島やマガダン州、チュクチ自治管区など南西部に集中しています。しかし、2005年にはじまった金産業発展のための各政策により、今後はさらなる金鉱の拡大が起こり得るでしょう。
アメリカの歴史的なゴールドラッシュのはじまりと言えば、1848年のカリフォルニア州が挙げられます。製材工場建設のために水車用の溝を掘っていた現地住民が、最初に金を発見したことがニュースとなり、アメリカ国内外から多くの採掘者が訪れました。当時はアジアからも多くの中国人がカリフォルニア州を訪れ、金採掘のために移住しています。
1850年に金の採掘量が減少したことから、外国人の採掘に20%の税金が課せられるなど、外国人による金の採掘が次第に困難となりました。同時期にオーストラリアでゴールドラッシュが起こったことも影響して、1855年頃にカリフォルニア州のゴールドラッシュが終焉を迎えます。
現在はネバダ州のボールド・マウンテンやベツェ・ポストなどをはじめ、西部に点在する金鉱で金が採掘されています。
南アフリカにおける金採掘の歴史のはじまりは、1890年頃に金鉱脈が確認されたことによります。本格的に探鉱事業が開始され、1897年時点で世界一の金産出国として知られるようになりました。2020年のランキングでも10位に入っており、高い金産出量を維持しています。
出典:U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2021」
金の産出量が減少傾向にある理由は、南アフリカを取り巻く政治的事情の影響です。アパルトヘイト政策の撤廃によって労働を強制される人々が減少したことによる産出量の減少であり、現在も埋蔵量は膨大と目されています。
南アフリカの主な採掘場は、1952年より操業が続くハウテン州のドリエフォンテインです。
東方見聞録で黄金の国と呼称されるほど、かつては日本も多くの金が採掘されていました。1601年に鶴子銀山の山師が金鉱脈を発見したことで開山した佐渡鉱山をはじめ、日本各地にもさまざまな時代の金採掘の名残があります。
佐渡鉱山では、最盛期で年間約400kgもの金が採掘されていました。しかし、徐々に金の産出量は減少し、1898年に枯渇しました。
出典:三菱マテリアル株式会社「最大級の産出量を誇った日本の金の宝庫」
現在は、鹿児島県の菱刈鉱山が日本の主な金採掘場です。産出量はわずかながら、高純度の金が採掘されています。
鉱山からの産出量は少ない一方で、日本は多くの金が都市部に眠っている国でもあります。買取専門店による宝飾品などの買取に加えて、各電子機器で使用されている金の量が多いためです。リサイクル技術の進歩により、携帯電話などの電子廃材から日々金が集められており、中古金スクラップとして供給されています。
通信機器や電子機器に利用される金は、2008年時点で6800tに達すると期待されており、冒頭で紹介した世界の金産出量を遥かに上回る量です。鉱山からの産出が減少しつつも、高いリサイクル技術により、現代の日本は世界有数の「都市鉱山」として知られつつあります。
金の産出国ランキングでは、国土面積が大きな国を中心に世界各地で金が採掘されています。トップの3か国をはじめ、近年の年間推移はゆるやかながら、現在も多くの金が採掘されている状況です。
日本も、かつては黄金の国と呼ばれるほど金の採掘が盛んでした。しかし、近年は採掘量の減少とリサイクル技術の発展により、新たな方法で金の保有が行われています。
今後も金は高い消費需要と投資需要が見込める一方で、供給量に限りがあるため、個人も世界情勢を視野に入れた保有計画を立てましょう。