
最終更新日:2023年11月29日
「海外旅行のついでに金製品を購入して日本に持ち帰りたい」という方も多くいるでしょう。すべての商品・サービスに税金が発生する日本では、金製品の購入時に当然消費税を支払わなければなりません。
では、海外で金地金や金を使った宝飾品を購入する際、消費税は発生するのでしょうか。
また、海外で金製品を購入して日本に持ち帰る際には、「知らなかった」では済まされないさまざまなルールがあります。そこで今回は、海外で購入した金製品の消費税に関する基礎知識や日本に持ち帰る際のルール、さらに海外から日本への金の密輸が増加している背景についても詳しく紹介します。
目次
すべての商品・サービスに税金が発生する日本においては、金製品の購入にも当然消費税がかかります。
日本の消費税には「軽減税率制度」が導入されており、標準税率(10%)と軽減税率(8%)という2つの種類があることも特徴です。金は軽減税率の対象ではないため、金製品の国内取引において消費者は一律10%の消費税を納めなければなりません。
日本には日本の税率制度が導入されているように、海外でも独自の制度・ルールが定められています。そこで次に、「海外で金製品を購入した際は消費税が発生するのか」について詳しく説明します。
金を課税対象にしている国は、日本・韓国・インドをはじめとした数か国のみであり、世界的に見ると非課税で金を購入できる国のほうが多いです。金を課税対象にしない国であれば、日本よりも10%お得に金製品を購入できると言えます。
特に、富裕層が多く集まる台湾・シンガポール・ドバイは金製品の購入におすすめの国とも言われています。台湾は日本から近く、宝石店やデパート、免税店などあらゆる場所で金製品をスムーズに購入できます。
また、「ゴールドスーク」と呼ばれる金の青空市場があるドバイは、純度が99%以上の金が非課税となっており、99%未満の金は付加価値税(VAT)となることに注意しておきましょう。
「海外で金製品を購入して日本で売れば、利益を得られるのではないか」と考える方もいるでしょう。事実、海外にて非課税で購入した金を日本に持ち帰って同じレートで売却すれば、消費税分の儲けが出ます。
しかし、金を個人で輸入した際は、輸入に関する法律・決まりを守る必要があります。単純に浮いた消費税分を丸ごと利益にできるわけではなく、現実的ではありません。
ここからは、海外で購入した金製品の消費税分の利益獲得が現実的ではない理由について詳しく説明します。
海外で購入した金製品を日本で売却しても、消費税分の利益獲得が現実的ではない理由には、「関税法による消費税の支払い義務」が大きく関係します。
海外で購入した金製品を日本に持ち込む際、下記に該当した場合は事前に税関へ報告しなければなりません。
出典:税関「7305 現金等の持出し(持込み)(カスタムスアンサー)」
重量が1kg以上かつ純度90%以上の金地金を持ち込む場合は、事前に「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」の必要事項を記入し、税関へ提出する必要があります。これはマネーロンダリングや国際犯罪組織への資金提供を防止するための単なる申告であり、消費税の納税が義務付けられるわけではありません。
しかし、海外で購入した物品の総額が20万円以上で、その中に純度90%以上の金がある場合は「携帯品・別送品申告書」の記入・提出が必要となり、20万円を超えた分の消費税を税関で支払う必要があります。
裏を返せば、総額が20万円以内であれば免税枠内となりますが、この20万円は金だけでなく金以外の物品もすべて含まれます。また、近年の金相場は高値となる傾向にあり、数十グラムで免税枠の金額を超えることもしばしばあります。そのため、免税枠内で日本に金を持ち込めるケースは非常に少ないと言っても過言ではありません。
なお、単体で免税範囲を超える20万円以上の物品の場合は全額に課税されることも留意しておきましょう。
日本は金製品の購入時に消費税が発生するものの、金を課税対象とする国の中でも比較的消費税が低いことが特徴です。
そのため、日本で購入した金製品を、日本よりも消費税が高い国で売却して差額分の利益を獲得しようと考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、こうした方法も現実的ではありません。日本では、「海外に非課税で持ち込める金地金の重量は1kgまで」という厳しい規定が設けられているためです。
また、たとえ1kg以下の金を海外で売却して差額分の利益が生じたとしても、日本に現金を持ち帰る際に税金が発生してしまいます。各国の税制によっては利益が生じる可能性もあるものの、時間と手間をかけて国際取引するほどの利益には及ばないでしょう。
海外で購入した物品の総額が20万円以上で、その中に純度90%以上の金がある場合は「携帯品・別送品申告書」の記入・提出が必要であることを前述しました。
この「携帯品・別送品申告書」は、たとえ海外で購入した物品の総額が20万円以下であっても金の持ち込みは申告対象です。海外から金や貴金属を持ち込む際は必ず記入・提出し、金の所持をあらかじめ申告しておかなければなりません。申告によって納税義務が発生するわけではなく、免税枠内であれば当然納税は免除となります。
なお、「携帯品・別送品申告書」を提出したからと言って必ずしも携帯品の検査が省略されるというわけではありません。提出後にも携帯品の検査を求められるケースは多々あるため、スムーズに対応するようにしましょう。
出典:税関「通関案内」
「海外で購入した金製品を日本に持ち帰って売却し、消費税分の利益を多く獲得する」という方法は現実的ではありません。しかし、「お小遣い程度の稼ぎ」を目的にするのであれば、海外旅行ついでに金製品を購入して日本で売却する方法は有効と言えるでしょう。
また、金は安定性の高い資産としても知られています。少しでもお得に金を購入し、資産として保有しておきたい・金投資をしたいという方にとっても海外取引はおすすめです。
しかし、前述したような関税法や消費税法上の「金の輸入に関するルール」を守らなければ違反・犯罪とみなされ、懲役刑もしくは罰金刑が科される可能性もあります。単なる申告漏れや未遂も同罪となるため、「知らなかった・分からなかった」では済まされません。
たとえお小遣い稼ぎが目的であっても、輸入消費税に関するルールを隅々まで把握しておくことが重要です。
金取引価格は世界共通であるにもかかわらず、近年では諸外国から日本への金密輸が増加傾向にあります。その背景には、消費税の仕組みや増税が深く関わっていると言えるでしょう。
そこで最後に、海外から日本への金の密輸が増えている主な理由として、「密輸と消費税の関係」について詳しく説明します。
そもそも密輸とは、免税枠である20万円以上の物品を非課税で日本に持ち込むという違反行為のことです。れっきとした犯罪となるため、発覚した場合は密輸者・密輸事業者に厳しい処罰が科されます。
密輸が増加する根本的な原因は、日本の消費税にあります。海外で金製品を100万円で購入し日本で輸入取引を行う場合、10%の国内消費税分を上乗せした110万円で売却可能です。つまり、密輸者は上乗せした消費税分の10万円を丸ごと利益として得られることになります。
消費税率が上がれば密輸による売上が増加し、輸入量が多ければ多いほど利益も増えるため、今後も金の密輸件数の増加が懸念されています。こうした事態を受け、財務省は密輸のさらなる厳罰化を図る見込みです。
また、従来までは金の売却による利益の獲得を目的とした「組織ぐるみでの密輸」が主流だったものの、近年では「簡単にできるお小遣い稼ぎ」と称して一般の方を密輸に加担させるという悪質な手口も報告されています。「騙された」「知らなかった」では済まされないため、こうした誘いを受けても乗らないようにしましょう。
金を課税対象にしている国は、日本・韓国・インドをはじめとした数か国のみであり、基本的に海外では金製品を非課税で購入することが可能です。そのため、「海外で購入した金製品を日本で売却すれば、消費税分の利益を得られるのでは」と考える方もいるでしょう。
しかし、関税法・消費税法によって金の輸入にはさまざまなルールが定められており、場合によっては税関で消費税を支払わなければならないケースもあるため、現実的ではありません。とはいえ、「お小遣い程度の稼ぎ」を目的にするのであれば、海外旅行ついでに金製品を購入して日本で売却する方法は有効です。
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