最終更新日:2023年10月30日
遺産相続によって発生する税金が、「相続税」です。相続税は税率が高く、相続財産が大きいほど税負担も当然大きくなります。こうした税負担を軽減させるためにも、近年では「生前贈与」を選択するケースも増えてきました。
また、現金ではなく金地金で生前贈与をすれば、さらなる節税効果を得られるといわれています。
そこで今回は、金地金による贈与税の節約術の概要や方法、相続税と贈与税の違い、金地金の売却において注意すべきポイントを詳しく説明します。金地金の相続または売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも「金地金(きんじがね)」とは、保存しやすい形に変形させた金塊のことです。「インゴット」や「ゴールドバー」、さらに「金の延べ棒」とも呼ばれ、古くから資産として流通しています。
相続・贈与において、現金や不動産をはじめとした資産は課税対象となるように、金地金も当然課税対象となります。しかし、金・純金・金地金には時価相場があり、時価相場額にグラム数をかけた売却額をもとづいて相続税・贈与税が計算されるため、その他の資産と比較して税負担を抑えやすいことが特徴です。
金・純金・金地金の魅力やメリットは、それだけではありません。金は固定資産税がかからないため安定資産であり、長期投資にも向いています。また、あらかじめ金を相続人の数だけ小分けにすれば、遺産分割もしやすくなります。
基本的に相続・贈与はいずれも、資産額が増えれば税率も高くなります。事前に税率を把握したうえで相続・贈与を行わなければ、相続・贈与を受ける側の税負担が大きくなることに注意が必要です。
「税負担を抑えるためには、遺産相続よりも生前贈与のほうがよい」という話を耳にしたことがあるという方も多くいるでしょう。これは、相続・贈与とで異なる「基礎控除額の計算方法」が大きく関係します。
ここからは、相続税と贈与税の概要や基礎控除額の計算方法について詳しく説明します。
相続税とは、「被相続人」とされる故人から遺産を相続した際に、相続を受けた側の「相続人」「受遺者」が負担しなければならない税金のことです。
出典:財務省「相続税について」
相続税額は、遺産総額から債務や葬式費用を差し引いた「正味の遺産総額」をベースに、基礎控除額を控除した残額から割り出します。この基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算します。なお、相続税の適用税率と控除額は下記の通りです。
正味の遺産総額 | 適用税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
例として、法定相続人数が「被相続人の配偶者と子ども2人」の計3人の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。正味の遺産総額が4,800万円以下となれば相続税はかかりませんが、4,800万円を超えた場合は上記の税率と控除額が適用された額の相続税を納めなければなりません。
贈与税とは、個人から無償で財産の贈与を受けた場合に課される税金のことです。贈与する側は「贈与者」、そして贈与を受ける側は「受贈者」と呼ばれます。基本的に贈与は、両親から子どもへ、または祖父母から孫へといったケースが多いでしょう。たとえ家族・親族間での贈与であっても、税金の対象となります。
出典:財務省「贈与税について」
贈与税額の計算方法は、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの課税方式によって異なります。一般的な課税方式である暦年課税では、原則110万円の非課税枠が設定されています。年間の受贈額が110万円以下であれば課税対象にならず、贈与税の申告も必要ありません。なお、贈与税(一般贈与財産用)の適用税率と控除額は下記の通りです。
非課税枠を超えた贈与税の課税価格 | 適用税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
出典:国税庁「No.4408~贈与税の計算と税率(暦年課税)」
例として、ある年に贈与を受けた金額が合計300万円だった場合、贈与税の課税対象となるのは「300万円-110万円(基礎控除額)=190万円」となります。この190万円に対して10%(19万円)を、贈与税として納めなければなりません。
税額だけにフォーカスすると、相続税と贈与税とでは相続税のほうが節税できるようにも思えます。しかし、生前に財産を分ける生前贈与では方法によって大きな節税効果を得られる可能性もあるため、一概にどちらが高い・安いかを比較することはできません。
前述の通り、贈与税は年間ごとに110万円の非課税枠が設定されています。1億円の資金を1回で相続または贈与で受ける場合は相続税のほうが税額を抑えられるものの、隔年で生前贈与を受けた場合、贈与税の総額は1回で相続した際の相続税を下回ることもあります。
また、数年後に価値が高まると見込まれる不動産や株などにおいては、価値が高まったあとに相続するよりも、贈与税を納めてでも評価額の低いうちから受け取ったほうがお得というケースもあるでしょう。このように、贈与税は方法や時期を分ければ節税が可能であり、結果として相続税対策にもなります。
なお、贈与税や相続税を納めたくないからと申告しなかったり虚偽の申告をしたりするのはNGです。無申告・過少申告をすると税務署による税務調査が入り、納税額に応じて無申告加算税や重加算税が課されます。単なる申告漏れでもこうした罰則を課されるため、注意しておきましょう。
1年間に110万円以下の贈与を受けた場合は、設定されている非課税枠によって贈与税を納める必要がありません。こうした仕組みを活用し、金地金そのものを精錬分割するという方法がよくとられています。
110万円超の金地金を110万円以下の金地金に複数分割すれば、非課税枠を超えることがないため贈与税を大幅に節約できます。なお、相続の場合は相続税の課税対象となるため、金地金の生前贈与を検討している方にとって最適な手段といえるでしょう。
とはいえ、金地金を分割するためには精錬加工サービスを提供している業者に依頼しなければなりません。分割作業に対しては当然手数料・加工費がかかるため、分割したい金地金の量が多い場合や細かく分割したい場合は相当の費用が必要となることも覚えておきましょう。
金地金の売却で得た利益は基本的には譲渡所得とみなされ、年間の利益が50万円以上になった場合は譲渡所得として課税されます。
また、金地金の所有期間によっても課税率・課税額の算出方法が変わることに注意が必要です。最後に、金地金の所有期間によって異なる売却時の税金の取り扱いについて紹介します。
●金地金を購入してから5年以内で売却した場合
金地金の購入から5年以内に売却した場合は、「短期譲渡所得」が適用されます。短期譲渡所得の場合、金地金の売利益とその年におけるほかの譲渡益を合算し、50万円の特別控除額を差し引いた金額が譲渡所得となります。
●【短期譲渡所得】
(金地金の売却益+そのほかの譲渡益)- 50万円(特別控除額)
●金地金を購入してから5年超で売却した場合
金地金の購入から5年を超えて売却した場合は、「長期譲渡所得」が適用されます。長期譲渡所得の場合、金地金の売利益とその他譲渡益の合計額から特別控除として50万円を差し引いた金額の2分の1が譲渡所得となります。
●【長期譲渡所得】
(金地金の売却益+そのほかの譲渡益)- 50万円(特別控除額)×1/2
※金地金の売却益は、売却価格から取得価格と売却費用を足した金額を差し引いた額
譲渡所得が大きいほど、当然納めるべき税金額も増えます。なるべく節税をしたいのであれば、金地金を5年以上保有し、長期譲渡所得が適用されるようにしましょう。
金地金とは、保存しやすい形に変形させた金塊のことです。固定資産税がかからないため安定資産であり、分割加工もできることから長期投資や贈与税の節約、さらに遺産分割にも適しています。
遺産相続や財産贈与において、相続税・贈与税が気になる方も多くいるでしょう。家族・親族からの財産の受け取りにかかる税金を節約するためには、「110万円以下に分割した金地金を数年~数十年おきに贈与してもらう」という手段も1つです。
なお、金地金の売却によって得た利益は譲渡所得とみなされ、保有期間によって課税率が異なることに注意しておきましょう。
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参考:贈与が年間110万円以内は非課税?申告不要でも証拠は残しておくべき!|円満相続ラボ
参考:「資産運用3.0」来るべきインフレ時代において、最適な資産運用戦略を考えるための情報を提供するメディア。
相続についてさらに詳しく知りたいという方は訳あり物件買取プロの下記記事も参考にしてください。
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