最終更新日:2025年12月18日
戦前に行われていた金本位制は、既に歴史的使命を終えました。しかし現在も世界各国は金を保有しています。各国政府が金保有を行う背景に加え、新興国が金の保有を積み増す理由などを解説します。
目次
世界各国の中央銀行が保有する金(Gold Reserves)は、国際的な外貨準備の重要な要素です。World Gold Council(WGC)の統計によると、世界全体の公的機関の金保有量は約3万5,000トン前後とされ、多くの国が外貨準備の一部として金を保有しています。
金はどの国の信用にも依存しない無国籍資産であり、通貨価値の変動や金融危機に左右されにくい資産です。そのため、各国は中央銀行などを通じて安全資産として金の長期保有を続けています。特に近年はインフレや地政学リスクの高まりから、各国の金需要が再び増加する傾向にあります。
WGCの国別ランキングは以下となります。
1位 アメリカ8,133.46トン
2位 ドイツ3,350.25トン
3位 イタリア2,451.84トン
4位 フランス2,437.00トン
5位 ロシア2,329.63トン
6位 中国2,303.51トン
7位 インド880.18トン
8位 日本845.97トン
米国が首位で8,000トン超を保持する圧倒的な存在です。次いでドイツ・イタリア・フランスと続きます。これら主要国の金保有は世界全体の中でも大きな割合を占め、国際通貨体制の中で金が依然として重要な資産であることを示しています。
金保有量ランキングの上位は、いずれも「金本位制の歴史」(欧州中心)と「戦後の金融制度」(米国中心)を背景に先進国が占めています。米国は8,133トンもの金を保有しています。これは第二次世界大戦後、世界経済の中心として金が米国に集中した歴史的経緯が大きく影響しています。
欧州諸国も同様で、ドイツ、イタリア、フランスなどが大量の金を保有しています。これらの国々は第二次世界大戦前に金本位制を採用し、現在はユーロ圏の金融や経済を支える立場にあります。多額の金保有は政府や通貨ユーロの信用力を裏付ける資産として現在も機能しています。
ただし、アメリカや欧州の先進国の中央銀行は、金の積極的な売買はしておらず、長期に渡り保有を維持するスタンスです。
近年注目されているのは、新興国による金保有の積み増しです。特に中国、ロシア、インドの動きが顕著で、経済力向上や地政学リスクを背景に、米ドル中心の外貨準備の構造を見直しています。
中国の金保有量は 約2,300トンに達し、世界第6位の規模です。米国と対立する中国は、ドル依存を引き下げる目的で金の割合を増やす戦略を続けています。
ロシアも約2,330トンの金準備を持ちます。経済制裁やドル経済圏からの影響回避のため、金保有の拡大は国家戦略の一環となっています。しかし、ウクライナ軍事侵攻の戦費捻出のため、保有する金売却の報道も出ている状態です。
インドも800トン超を保有し、外貨準備の安定化に金を活用しています。インドでは国民の金需要が旺盛という文化的背景もあり、政府・中央銀行レベルでも金の価値が重視されています。
これらの国々の動きは、金が単なる資産ではなく、国際競争力も左右する戦略的資産として扱われていることを示しています。
主要国の金保有残高を比較すると、金が依然として国家の信用を支える重要な資産と分かります。米国を中心とする先進国は歴史的に蓄積した金を維持し、新興国は外貨準備の多様化や通貨の安定化を目的に金を積み増している、という対比が見られます。また、基本的に国家の金保有は長期に渡ります。
投資家にとっても、こうした各国政府の金保有の動きは、金市場の長期的な動向を読む手掛かりとなります。主要国の金保有の背景を理解することは、金投資の価値を見極める上で極めて重要な視点と言えるでしょう。
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金融・投資ライター。大手証券グループ投資会社を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析、為替市場分析を得意としており、IPO関連記事、資産運用記事などを執筆、みんかぶなど複数媒体に寄稿中。また過去多数のIPOやM&Aに関与しブックライティングやインタビューも手掛けている。 ファンダメンタルズ分析に加え、個人投資家としてテクニカル分析も得意としている。 Xアカウント @writerishii

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