最終更新日:2026年8月17日
近年、金投資の方法としてETFが注目される機会が多くなりました。その中で、金の投資需要に対するETFの比率はどの程度なのでしょうか?実はその比率は十数%に留まります。未だ現物指向が強い金投資について、ETFの比率及びその背景を解説します。
目次
近年、金の投資手段として金ETF(上場投資信託)が注目を集めるようになりました。証券口座があれば株式と同様に売買でき、少額から投資できる手軽さから個人投資家に身近な存在となりました。
しかし、金の総需要全体の中でETFが占める割合を見ると、その印象とは異なる実態が見えてきます。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータによると、2025年の世界金総需要は5,002トンと過去最高水準を記録しました。その内訳は宝飾品1,542トン・地金および金貨1,374トン・中央銀行863トン・テクノロジー322トン、そして金ETFは801トンです。
総需要5,002トンに対してETFの801トンを割合で見ると、約16%に留まります。一方、宝飾品は約31%、地金・金貨は約27%、中央銀行は約17%の構成であり、金ETFは金総需要の中ではまだ主役の座にはありません。
金ETFが注目を集める一方、金総需要の主役は依然として宝飾品と地金・金貨です。2025年のデータを見ると、両者を合わせると全体の約58%であり、金需要の過半数を占めます。
宝飾品需要は、金価格の高騰により2025年は1,542トンと前年比18%減少し、5年ぶりの低水準となりました。しかし、金額ベースでは前年比18%増の1,720億ドルと過去最高を更新しており、消費者が購入できる数量は減ったものの「金を買いたい」というニーズは依然として強いことがうかがえます。特にインドや中国などでは、婚礼など文化的・宗教的な背景に根ざした金の宝飾品需要が安定的にあり、それら国々の経済成長もあいまって、価格変動による短期的な増減はあっても構造的な需要として機能しています。
地金・金貨需要は2025年に1,374トンと過去12年間で最高水準に達しました。金価格が史上最高値圏で推移する中で、現物の金を手元に保有したい、という需要は衰えていません。「現物の金を直接保有する」という投資スタイルが根強く支持されていることを示しています。
中央銀行による購入も重要な需要です。2025年は863トンでETFを上回っており、新興国を中心とした各国中央銀行が外貨準備として金を積み増す動きが続いています。このように金総需要は、宝飾品・地金金貨・中央銀行という3つの柱が安定的に需要を支える構造があり、金ETFはそれらを下回る1つの構成要素にすぎません。
金ETFの需要は、宝飾品や地金・金貨と比べると、年毎の変動が非常に大きいという特徴があります。WGCのデータを振り返ると、2021年から2023年にかけては3年連続で純流出(マイナス)です。2024年は流出がほぼ止まり実質横ばいに転じ、2025年には801トンと5年ぶりの大幅な純流入を記録しました。わずか数年の間に、需要がプラスからマイナス、そして再びプラスへと大きく転換しています。
この変動幅の大きさは、金ETFが金融商品として、機関投資家や個人投資家の短期的な市場動向に左右されやすい性質が背景にあります。金利が上昇する局面では、利息を生まない金ETFより債券など利回りのある資産が好まれ、ETFから資金が流出しやすくなります。逆に地政学的リスクの高まりやインフレ懸念が強まると、安全資産として金ETFへの資金流入が加速します。2025年の大幅な流入も、イラン紛争を背景とした地政学リスクの高まりや世界的なインフレ懸念が主な要因となりました。金融商品として売買しやすい特徴が、流出につながっている面が否定できません。
一方、宝飾品や地金・金貨の需要は価格水準に応じた増減はあるものの、文化的背景や現物保有への根強い需要に支えられており、ETFほど極端な振れ幅にはなりません。中央銀行による購入も、脱ドル化という長期的な戦略に基づくものであり、短期的な相場動向に左右されにくい安定した需要です。金ETFは話題性があり相場への影響力もありますが、需要の安定性という観点では他のカテゴリーに劣後する点は押さえるべきポイントです。
金ETFは金総需要の約16%を占めるに過ぎませんが、個人投資家の金投資の入口として有効です。現物の金地金を購入するには数十万円単位の資金が必要となる場合が多いのに対し、金ETFは数千円から購入できます。証券口座があれば株式と同じ感覚で売買でき、保管場所や盗難リスクを心配する必要もありません。金投資に興味はあるものの、現物保有へのハードルを感じる方にとって、金ETFは手軽な第一歩です。
金ETFは金総需要の主役ではありませんが、資産分散やインフレ対策の観点から一定の役割を果たしています。金需要の全体像を正しく理解した上で、金ETFを自らのポートフォリオにどう位置付けるかを冷静に考える姿勢が、賢い金投資につながると言えるでしょう。
参考:ゴールド・デマンド・トレンド: 2025年第4四半期および通年
参考:ゴールド・デマンド・トレンド2024年通年および第4四半期
金・貴金属の売却の際は分かりやすい価格設定とスピーディな手続き、買取手数料0円の買取本舗七福神にご相談ください。
金融・投資ライター。大手証券グループ投資会社を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析、為替市場分析を得意としており、IPO関連記事、資産運用記事などを執筆、みんかぶなど複数媒体に寄稿中。また過去多数のIPOやM&Aに関与しブックライティングやインタビューも手掛けている。 ファンダメンタルズ分析に加え、個人投資家としてテクニカル分析も得意としている。 Xアカウント @writerishii

【2025年】金価格は今後どうなる?節目価格15,000円到達なるか?相場推移と価格変動の要因も
更新日:2025年1月9日
金価格は2024年まで6年連続して上昇しました。2025年も上昇が...詳しくはこちら
【2026年】金価格は今後どうなる?上昇要因は複数あるが、2025年の急騰に対する警戒も必要
更新日:2026年1月8日
2025年の金価格は急騰とも言える上昇を見せました。また金の年...詳しくはこちら