最終更新日:2023年12月28日
2008年9月の経済危機「リーマンショック」は、アメリカの投資銀行であるリーマンブラザーズの倒産がきっかけで発生しました。リーマンショックはアメリカだけでなく世界中に影響を及ぼし、金市場も例外ではありませんでした。
リーマンショックの後、金価格は急落・高騰したことは有名で、その理由が気になる方もいるでしょう。この記事では、リーマンショックと金市場の関係に加え、金市場に影響を及ぼす一般的な要因について解説します。
リーマンショックとは、2008年9月に発生した世界的な金融・経済危機のことです。リーマンショックは、アメリカの有力投資銀行である「リーマンブラザーズ」が史上最大規模とされる負債総額6000億ドル以上を抱え、倒産したことを契機として発生しました。
リーマンブラザーズ倒産は、低所得者向け住宅ローンが住宅バブルの崩壊とともに破綻し、金融機関の経営が悪化する「サブプライムローン問題」が大きな要因です。リーマンショックの影響は、アメリカから世界中へと一気に広がりました。
リーマンショックは、アメリカだけではなく、世界中の経済に大きな影響を与えています。アメリカの金融危機を受けて、ドルに対しての信頼度が失われ、世界中の国々でドル資産を他のものへ投資する動きが活発になりました。
日本でもリーマンショックは大きな影響を及ぼしています。リーマンショック直後の2008年10月末の日経平均株価は、バブル崩壊後よりもひどい安値の水準を記録しました。さらに、日本の最大貿易大国がアメリカであったことも影響し、輸出に関わる企業は大きな打撃を受けています。
日本の企業では非正規雇用の社員を解雇する「派遣切り」が多発し、社会問題となりました。日本経済への影響は、リーマンショックから数年続き、1万5,000件の会社が倒産したとされています。
リーマンショックによって株価が下がる一方で、金の価格は大幅に上昇しました。金は一度購入すれば手元に残る現物資産なので、安定した資産とみなされ価格が上昇したと考えられます。
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リーマンショック前後の金1gあたりの平均価格は、以下の通りです。
1グラムあたりの金価格(年平均)
2006年 | 約2,287円 |
---|---|
2007年 | 約2,659円 |
2008年 | 約2,937円 |
2009年 | 約2,951円 |
2010年 | 約3,477円 |
2011年 | 約4,060円 |
2012年 | 約4,321円 |
2013年 | 約4,453円 |
2014年 | 約4,340円 |
2015年 | 約4,564円 |
リーマンショックが起こる前の2006年とリーマンショック後の2015年の金価格を比較すると、約2倍価格が異なることが分かります。
金価格の相場と下落・高騰理由を、リーマンショック前・リーマンショック直後・リーマンショックから数年後にわけて解説します。
1990年代まで、金1gの平均価格は1,000?1,500円と低い水準を推移していました。しかし、2001年のITバブル崩壊、2003年のイラク戦争などの影響で、株式や通貨などへの投資が減り、安全資産である金へ投資先を変更する人が増え、金の価格が上昇しています。2006年には約2,287円を記録し、1990年代の金価格よりも2倍ほど上昇しました。
また、2007年にはサブプライムローン問題が発生し、米国住宅バブルが崩壊しました。住宅バブルの崩壊がきっかけとなり、欧州を中心に金融機関の倒産が相次ぎます。株式や通貨の投資への不安感が強くなり金投資する人がさらに増え、2,659円まで金の相場価格が上昇傾向になりました。
リーマンショック直前の2008年9月には、国内金相場は約2,859円でした。
リーマンショック直後の2008年10月には、金の価格は一時的に大きく下落します。リーマンショックによって市場が疑心暗鬼の状態になり、取引相手が破綻するリスクを避けるために、銀行からの資金調達が困難になりました。資金を調達するために、保有する金を売却する銀行が増加しました。
また、ヘッジファンドには、経済状況の悪化によって顧客からの解約が殺到します。顧客の出資金を返還するために、金の売却が増加しました。
リーマンショックによるさまざまな要因が重なり、金の売却が殺到したことで、金の価格が急落したと考えられます。2008年10月には、一時的に2,104円まで国内金価格が下落しました。
下落した金の価格は、2009年に入って徐々に高騰します。リーマンショックから3年後の2011年9月には、海外金相場では歴史的高値である1,900ドルを記録します。国内でも2011年8月に4,745円の価格を記録し、リーマンショック直後よりも2倍以上の高値で取引されていました。
金価格上昇の理由は、2008年の終わり頃にアメリカ政府が打ち出した金融緩和政策です。アメリカ政府が金融市場にドルを大量に供給したことで、ドルの価値が薄まりドル安の時代となりました。ドルへの信頼度が薄まると、世界共通のお金としての価値がある金の投資需要が高まり、金の価格が上昇したと考えられています。
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金の価格は毎日変動するため、できる限り高値のときに売却するのが望ましいでしょう。金価格の変動を察知するには、リーマンショックなどの世界経済に大きな影響を与える出来事について、常にアンテナを張っておく必要があります。
リーマンショック以外に、金の価格に影響を及ぼす原因を4つ紹介します。
金相場に影響を及ぼす原因の1つは、経済・治安のリスクです。治安のリスクとは、戦争やテロなどを指します。
ある国でテロや戦争が起こると、国の通貨への信頼が揺らぎ、投資家たちは不安を覚えるでしょう。通貨の価値が下がるというリスクを回避するために、投資対象として金需要が高まり、金の買取相場価値が上昇する可能性があります。
近年では、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘によって、金の価格が大きく上昇しています。過去には、1979年のソ連アフガニスタン侵攻や2001年のアメリカ同時多発テロの際に、金の価格が高騰しました。
インドや中国など新興国の経済成長は、金買取の価格変動が起こります。2000年以降、急激に成長した中国やインドでは、金を積極的に購入する動きがみられます。
金はジュエリーなどの宝飾品だけでなく、電子機器の製造にも欠かせない金属です。IT化が進んでいる現代で経済成長するためには、多くの電子機器を製造する必要があります。実際に、インドと中国では大量の金を輸入して、電子機器の製造を進めています。
そのため、新興国が成長していくと、より多くの金が買い求められ、価格が高騰すると言えるでしょう。
インフレとは、市場のさまざまな物の値段が上がり続ける状態のことです。物の値段が上がると、相対的に貨幣の価値が下がる現象が起き、金への需要が集まります。
金は、インフレのときに価値が上昇するのが特徴です。投資家はインフレのリスクを減らす目的で、分散投資のための金を買い、金の価格が上昇します。実際に、インフレが進んでいた2022年のアメリカでは、金の投資成果が株式を大きく上回っていたことが確認されています。
為替とは、通貨が異なる国同士で為替手形や送金小切手を使用して決算する方法です。金の価格の変動には、ドル円為替相場が大きく関わっています。
世界的にドルで取引されている金は、日本に輸入する際にドル円為替相場によって価格が変わります。他の輸入品と同様に、1ドル100円のときと1ドル120円のときでは、120円で取引した金のほうが価格が上昇すると言えるでしょう。
そのため、円安ドル高のときには金の価格が上がり、円高ドル安のときには金の価格が下がる傾向にあります。
リーマンショックの直後、金の売却が殺到し金の価格は下落しました。その後、金融緩和政策などの影響で金の価格は徐々に高騰しました。金の価格はリーマンショック以後もさまざまな要因で変動しています。治安のリスクや・新興国の成長・インフレ・円安などさまざまな社会情勢に日ごろから目を向けておくことが大切です。
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