最終更新日:2021年10月22日
ダイヤモンドは希少価値が高く、ジュエリーとしてだけでなく、資産としても人気があります。そのため、ダイヤモンドを購入する際は、できるだけ価値ある商品を選びたいと考える人は多いでしょう。また、鑑定書に記載された品質以外にも、ダイヤモンドの産出国について関心を持つ人もいるのではないでしょうか。
この記事では、ダイヤモンドの産出国について産出量のランキングや、各国の採掘の歴史、採掘されるダイヤモンドの品質の違いについて紹介します。日本国内のダイヤモンド事情についても触れるため、ぜひ参考にしてください。
ダイヤモンドは地中深くの高温高圧下で生成される鉱物で、99.9%以上の成分が炭素です。ダイヤモンドに微量に含まれる他の物質が、結晶の形状や品質に影響を与えると言われています。
またダイヤモンドは、地球上の古い地殻に見られる「キンバーライト」という鉱石の鉱脈(キンバーライトパイプ)から採掘されることがほとんどです。キンバーライトパイプはロシアやアフリカなど限られた土地にしか見られないため、ダイヤモンドを採掘できる国には偏りがあります。
下記は、ダイヤモンドの採掘量が多い国と産出量をまとめた表です。なお、データはあくまで工業用ダイヤモンドの産出量であり、採掘されたダイヤモンドのうち品質の高いものが宝石として取り扱われます。
【2020年の天然ダイヤモンド産出量】
順位 産出国 産出量(百万カラット) 1 ロシア 19 2 オーストラリア 12 3 コンゴ 12 4 ボツワナ 5 5 南アフリカ共和国 3
出典:USGS「Mineral Commodity Summaries 2021」
ダイヤモンドの主要産地は、キンバーライトパイプの存在するロシア・オーストラリア・アフリカ大陸です。なお企業別に見ると、ロシアのALROSA(アルロサ)社・南アフリカ共和国発祥のDe Beers(デビアス)社・オーストラリアとカナダに鉱山を持つRio Tinto(リオティント)社のシェアが高いことが分かります。
ダイヤモンドは、紀元前のインドで初めて発見されたと言われています。自然界の何よりも硬く、美しいきらめきを持つダイヤモンドは、世界各地で神秘性を秘めた宝石として重宝されるようになりました。しかし、当時はまだダイヤモンドの加工技術がなかったため、他の宝石と比べて、宝飾品としてのダイヤモンドの価値は高くありませんでした。
その後、1475年にベルギーでダイヤモンドをダイヤモンドで切削・研磨加工するカット技術が確立したことにより、宝飾用ダイヤモンドの価値が一気に高まりました。さらに、インドが中心であったダイヤモンド産出国は、18世紀にはブラジル、19世紀にはアフリカ南部に時代と共に移り変わります。
なお、アフリカ南部では、キンバーライトパイプが発見され、採掘現場が地下深くへと移動しました。その過程で、地下深くを掘り進める近代的な採掘技術が確立したと言われています。
20世紀に入ると、ロシアでも大規模なダイヤモンド鉱脈が見つかり、21世紀に入った現在、ロシアは最大のダイヤモンド産出国となっています。
ダイヤモンドは、G.I.A(米国宝石学会)が定めた4Cなどの国際基準によって評価されるため、基準をクリアしていれば、産出国によって品質に大きな違いはありません。しかし、産出国ごとに鉱床の成り立ちの違いや採掘の歴史の違いがあるだけでなく、産出する原石にも異なる特徴が見られることがあります。
ここでは、宝石用のダイヤモンドの代表的な産出国5か国の採掘の特徴などを紹介します。
世界最大のダイヤモンド産出量を誇るロシアでは、連邦北東部に位置するサハ共和国で国全体の90%以上のダイヤモンドが採掘されています。サハ共和国にはウダーチナヤ鉱山・ジュビリー鉱山・ミールヌイ鉱山など世界最大級の鉱山が多数存在し、大粒で良質な原石が産出することで有名です。
またロシアでは、不純物の代表格である窒素を含まない「タイプ2」と呼ばれる非常に美しく希少なダイヤモンドが産出することも知られています。
さらに、シベリア地方には太古の隕石衝突により生成されたダイヤモンド鉱脈も存在すると言われています。そのため、ロシアでは今後も多くのダイヤモンドが産出されるでしょう。
世界のダイヤモンド産出国のうち、アフリカ南部の国々が大半を占めます。なかでも、コンゴ・ボツワナ・南アフリカ共和国のダイヤモンド生産量は世界的に見ても多く、1世紀以上の歴史があります。
アフリカ大陸で最初にダイヤモンド採掘が行われた国は南アフリカ共和国です。19世紀に内陸の町キンバリーでダイヤモンドが発見され、近代的なダイヤモンド採掘が始まったことも知られています。
また、ボツワナも世界屈指のダイヤモンド産出国であり、特にジュワネング鉱山で採掘されるダイヤモンドの品質が高いことが有名です。
一方でコンゴは、ダイヤモンドだけでなく、貴金属などの地下資源が豊富に存在する国です。その資源を巡って多くの紛争が起きており、高価なダイヤモンドが、武器調達資金を得るために取引されていると言われています。
紛争地帯で裏取引されるダイヤモンドは、コンフリクトダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)と呼ばれ、国際的に問題視されている状況です。
カナダのダイヤモンド採掘の歴史は比較的浅く、1998年に操業開始したエカティ鉱山がカナダ初のダイヤモンド鉱山です。
エカティ鉱山をはじめとするカナダの多くのダイヤモンド鉱脈は、夏でも氷が残る過酷な環境にあったため、20世紀末まで発見されることがありませんでした。
人里離れた厳しい環境にありながら、労働環境の整備や安全性の確保を行い操業しているため、倫理的(エシカル)な面で世界的に支持されています。カナダ産のダイヤモンドには鉱山・研磨された重量・シリアル番号などが記された証明書が付属していることも特徴の一つです。
アメリカでは、大規模なダイヤモンド採掘は行われていないものの、観光地として有名な場所が存在します。
アーカンソー州にあるダイヤモンド・クレーター州立公園は、ダイヤモンドの採掘体験ができる観光名所です。ダイヤモンド・クレーター州立公園は、火山が侵食されてできた土地であり、地表浅い土壌にもダイヤモンドなどの宝石が含まれています。
来場者は、スコップやふるいなどの道具をレンタルし、掘り起こした土をふるいで洗いながらダイヤモンドを探し、持ち帰ることが可能です。敷地内では毎日1~2個の小粒のダイヤモンドが見つかっていると言われています。
オーストラリアのアーガイル鉱山は、世界最大のダイヤモンド鉱山として知られています。しかし、採掘量の減少と、環境への配慮のため、2020年11月に閉山しました。アーガイル鉱山は高品質なピンクダイヤモンドの産出地として有名で、全世界のピンクダイヤモンドの95%を供給していたと言われています。
アーガイル鉱山閉山後、同等の品質のピンクダイヤモンドの鉱脈は未だ見つかっていません。そのため、オーストラリア産のピンクダイヤモンドの価値が今後上がる可能性が高いと言えるでしょう。
ダイヤモンドの鉱床(母岩)となるキンバーライトパイプは、10億年以上前に形成された古い地殻にしか存在しないと言われています。一方で、日本は地球上の比較的新しい地殻上にあるため、ダイヤモンドを採掘することは地理的に難しいでしょう。
しかし例外的に、2007年に愛媛県で非常に小さなダイヤモンドが発見されました。新しい地殻で火山由来のダイヤモンドが見つかることは世界的にも珍しく、今後研究が進むにつれてダイヤモンド生成にまつわる新たな側面が解明される可能性もあります。
また近年、日本国内では、人工ダイヤモンド(合成ダイヤモンド)の研究や普及が進んでいます。人工ダイヤモンドは工業的な分野だけでなく、ジュエリー業界でも注目されており、国産ブランドも見られるようになりました。なお、環境負荷が少なく、紛争への関与の心配がない人工ダイヤモンドは、世界的にも人気が高まっています。
天然ダイヤモンドと遜色ない輝きを持つ人工ダイヤモンドの市場は、今後さらに拡大するでしょう。
ダイヤモンドの代表的な産出国はロシアやアフリカ大陸の国々です。宝石としてのダイヤモンドは世界的な評価基準が設けられており、産地にかかわらず一定の品質の商品として販売されています。
ただし、産地によっては不純物の少ないダイヤモンドや、希少なカラーダイヤモンドが採掘されるため、一般基準以外にもこだわりたい人は原産地に注目するとよいでしょう。また、お手元にあるダイヤモンドの品質や、産地による価値に興味を持つ人は、ぜひ「買取本舗七福神」にご相談ください。