最終更新日:2021年04月06日
国際情勢に影響されにくい堅実な資産として人気の高い金は、単純に大きなものほど価値があるとは限りません。たとえば同じ大きさの金のジュエリーであっても、買取業者に出すと査定価格が異なる場合があります。
金製品それぞれの資産価値を知るためには、正しい知識と技術に基づいた査定を行わなくてはならず、一部の方法では専用機器も必要です。
一方で手軽に金の価値を判断する方法の一つとして、比重の計算が挙げられます。ここでは、金の比重とはどのようなものか、具体的な計算方法や手順と共に紹介します。
比重とは、「ある物質と標準物質の密度の比」であり、計測したい物質の密度を表しています。
金の比重を調べる場合に用いられる標準物質は「水」です。そのため金の比重とは、「水の密度と比較した値」とも言えます。
単純な重さや大きさではなく比重を調べる理由は、金製品のすべてが純金でできているわけではなく、同等のサイズであっても比重が異なるためです。ジュエリーなどの装飾品やコイン・金歯など一般に流通している金の大半は、加工しやすいように他の金属と混ぜ合わせて使用されています。
それぞれ含有する金属の量や種類が異なるため、金の比重に差が生じます。
比重を活用すると、金自体の純度を推測できます。金の比重から純度を調べる方法を「比重法」と呼び、水に浮かべて計測する専用機器(比重計)を使用します。
比重法は、ジュエリーなどの計測物質における実際の比重と、銀や銅を含有する金合金の比重を照らし合わせる方法です。
比重法を活用して純度を調べる方法は、計測対象を削ったり傷つけたりすることのない「非破壊検査」で計測できることが最大のメリットです。希少性の高い計測物質であっても、傷をつける方法で比重や純度を調べると価値を下げる恐れがあります。
一方で比重法のデメリットは、必ずしも「正確に計測できるとは限らない」という点が挙げられます。宝石など他の装飾がついている場合や、シンプルなデザインでも本体に銀や銅以外の金属素材や不純物が含まれているケースがあるためです。また、中が空洞になっており、正確な重さを計測できない場合もあります。
金製品の比重を調べるときの基準となる数値は、同じカラットであっても含有する他の金属の比率によって異なります。
以下は、金合金に含まれる一般的な金属である「金・銀・銅」の比率を、カラットごとに整理した表です。
K24
銀と銅の比率 - 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 99.9 - - 19.32 K22
銀と銅の比率 (10/0) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 91.6 8.4 0 18.05
銀と銅の比率 (5/5) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 91.6 4.2 4.2 17.83
銀と銅の比率 (0/10) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 91.6 0 8.4 17.61 K20
銀と銅の比率 (10/0) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 83.3 16.7 0 16.94
銀と銅の比率 (5/5) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 83.3 8.35 8.35 16.56
銀と銅の比率 (0/10) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 83.3 0 16.7 16.19 K18
銀と銅の比率 (10/0) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 75 25 0 15.97
銀と銅の比率 (5/5) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 75 12.5 12.5 15.46
銀と銅の比率 (0/10) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 75 0 25 14.99 K16
銀と銅の比率 (10/0) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 66.6 33.4 0 15.09
銀と銅の比率 (5/5) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 66.6 16.7 16.7 14.49
銀と銅の比率 (0/10) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 66.6 0 33.4 13.94 K14
銀と銅の比率 (10/0) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 58.5 41.5 0 14.33
銀と銅の比率 (5/5) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 58.5 20.75 20.75 13.66
銀と銅の比率 (0/10) 金(%) 銀(%) 銅(%) 比重 58.5 0 41.5 13.06
出典:ダイヤモンドホイール・ダイヤモンド砥石・CBN工具・CBN砥石と研削研磨の情報サイト「金の比重の計算方法|金合金の比重一覧」
上記はあくまで銀や銅を含有する三元合金の場合です。ピンクゴールドやイエローゴールドのように「ニッケル」「パラジウム」など他の金属が混ぜられているものは、比重が異なります。
なお、カラットの表示方法は複数あり、同じ24金でも「K24」と刻印されている金製品もあれば「24KT」と刻印されている金製品もあります。日本以外の各国で製造された金製品の場合は、「24KT」のような表示が一般的です。
「K24」や「K22」など刻印が入っている金の延べ棒や金製品は、前述した「【純度別】金の比重一覧表」と照らし合わせることで、自宅でも比重が簡単に計算できます。
以下では、刻印が入っている金の比重を自分自身で計算する方法について、4つのステップに分けて解説します。
金の刻印を参考にすることで、金の成分比率から合計値の算出が可能です。
前述した金の比重一覧表のとおり、同じカラットでも金・銀・銅の含有量は異なります。たとえばK18の(5/5)を挙げると、以下のとおり銀と銅が同程度含まれています。
K18
銀と銅の比率 | |||
---|---|---|---|
(5/5) | |||
金(%) | 銀(%) | 銅(%) | 比重 |
75 | 12.5 | 12.5 | 15.46 |
上記の表の「銀と銅の比率」は、金に対して銀と銅がどのような比率で含まれているかを表しています。K18(5/5)の場合は、銀と銅が5割ずつ含まれているという意味です。
よって金:銀:銅の成分比率は75:12.5:12.5となります。これらの数字をすべて足し、合計値を出しましょう。
合計値:75+12.5+12.5=100
算出した成分比率の合計値は、後半で使用します。
次に、合計値を出すときに使用した成分比率を各金属の密度でそれぞれ割ります。
各金属の密度は、以下のとおりです。
金・銀・銅それぞれの密度(1cm3あたり) | |
---|---|
金 | 19.32 |
銀 | 10.5 |
銅 | 8.96 |
前述したK18(5/5)の数字で計算した場合、以下の数字となります。
金:75÷19.32≒3.88
銀:12.5÷10.5≒1.19
銅:12.5÷8.96≒1.39
これらの数字が、実際の金製品に含まれる各金属の体積の値です。
金・銀・銅の各金属で算出した体積をすべて足し、合計値を出します。K18(5/5)の場合は、以下のとおりです。
(金)3.88+(銀)1.19+(銅)1.39≒6.46
結果、体積の合計値は6.46となります。
最初のステップで算出した金の成分比率の合計値を、体積の合計値で割ります。ここまで例に挙げてきたK18(5/5)の値を用いて計算すると、計算式や数値は以下のとおりです。
(成分比率の合計値)100÷(体積の合計値)6.46≒15.47
先に紹介した【純度別】金の比重一覧表と照らし合わせると、K18(5/5)の比重とほぼ同じ数字であることが分かります。
このように、刻印のある金製品は銀と銅の比率さえ分かれば、比重を計算で出すことができます。銀や銅以外の金属を含んでいる場合も、基本的な計算方法は同様です。
業者に査定してもらう前に純度や比重を推測したい方は、挑戦してはいかがでしょうか。
刻印がない金の比重も、自宅で調べることができます。
比重を計算するためには、まず簡易的な計測器を用意しましょう。一般家庭で使用されている計量器と水を入れたグラス、糸と棒で作成できます。
具体的な手順は、以下のとおりです。
(1)金製品の重さを計る
前準備として、金製品の重さを計ります。計量器で計り、数字をメモしましょう。
↓
(2)計測器を組み立てる
水を入れたグラスを計量器の上に乗せ、簡易的な計測器を完成させます。金製品の純粋な体積を計るために、以下の点に注意してください。
↓
(3)金製品を水に入れて体積を計る
糸と棒を使用して、金製品を吊るすようにグラスの水へ入れます。金製品が底につかないよう、糸の長さに注意してください。
金製品の体積分だけ、計量器の目盛りが動いていることを確かめます。水の密度は1g=1cm3であるため、たとえば10gの位置に針が動いている場合、金製品の体積は10cm3です。
↓
(4)金製品の重さを体積で割る
最初に計測した金製品の重さを、水の中で計測した体積で割ります。仮に150gの金製品の体積が10cm3だった場合、計算式は以下のとおりです。
(金製品の重さ)150g÷(体積)10cm3=15
「【純度別】金の比重一覧表」と照らし合わせると、K18の比重が14.99~15.97の範囲のため、計測した金製品の純度はK18であると推測できます。
使用するグラスは、金製品を入れても縁や底に当たらない程度の大きさのグラスを用意しましょう。棒は、金製品を吊るしても折れない程度の棒であれば、竹串や割りばしで十分です。
時代を問わず、資産の一つとして人気が高い「金」の比重は、銀・銅など、他の金属の含有量によって左右されます。一定の計算方法や手順で推測することができますが、「K22」など同じ数字が刻印されている場合でも、価値が同等とは限りません。
金の正しい価値を知りたいときは、知識と機器を有する専門業者に査定を依頼しましょう。
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金の査定や買取でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。