最終更新日:2021年07月29日
希少価値があり腐食しにくい金は、資産形成に用いられることも多い鉱物資源の1つです。しかし、金の売買を行っているものの、金を取り出す方法や採掘できる場所について詳しく知らない人は少なくありません。金の採掘に関する知識を深めて疑問を解消すれば、金の売買で利益を得ることにもつながるでしょう。
当記事では、金の採掘場所や採掘方法、鉱石から金を取り出す方法について解説します。金の採掘量や年間産出量にも触れるため、金の売買に興味がある人や実際に売買している人はぜひ参考にしてください。
美しい輝きを放つ金は、金鉱脈を発見できれば採掘できます。主な金鉱脈は、山や川にあることが特徴です。金は、採掘場所によって下記のように呼び方が変わります。
山で採掘した場合 | 山金 |
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川で採掘した場合 | 川金 |
ここでは、山金と川金の有名な採掘場所と採掘方法について解説します。
日本における有名な山金の採掘場所は、下記のとおりです。鹿児島県の菱刈鉱山では、現在も山金の採掘が行われています(2021年7月時点)。
有名な採掘場所 |
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山金の採掘方法は、下記のとおりです。
露頭掘り | 地表から地下に向かって採掘する |
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ひ押し掘り | 鉱脈に沿って採掘する |
坑道掘り | 坑道を掘って地下水の排水を行いつつ採掘する |
山金の採掘が始まった初期は、「露頭掘り」が行われていました。現在の山金採掘は「ひ押し掘り」「坑道掘り」が主流となっています。
川金は、金鉱脈から剥がれ落ちた金が川底に溜まったものをいいます。日本における有名な川金の採掘場所は、下記のとおりです。
有名な採掘場所 |
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採掘方法の特徴は、下記のとおりです。
比重選鉱 |
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専用の道具には、ゆり板やゴールドパン、藁を編んで作ったネコダなどがあります。比重が軽い土砂は流水によって流され、比重が重い金だけがゆり板やネコダに残る仕組みです。
山金の場合、採掘した鉱石から金を取り出す必要があります。そのため、川金よりも山金のほうが採掘に手間と時間がかかることが特徴です。鉱石は石英や炭酸塩などの割合が高く、1トンの鉱石から採取できる金はわずか数グラムです。
ここでは、鉱石から金を取り出す方法や仕組みについて解説します。なお、鉱石から金を取り出す方法は、国や地域によって異なります。
「青化法」は、粉砕した鉱石に青化ソーダを加えて金を取り出す方法です。青化製錬法・シアン法とも呼ばれます。
青化法により鉱石から金を取り出す仕組みは、下記のとおりです。
青化法による金の採取は、金の含有量が多い鉱石に用いられます。金の採取に使われた溶液は、再利用することが可能です。ただし、溶液には人体汚染や環境汚染につながる成分が含まれているため、取り扱いに十分な配慮が求められています。
「灰吹法」は、粉砕した鉱石を鉛に入れて溶かすことで金を採取する方法です。金銀吹き分け法や焼金法によって、さらに金の純度を高めることができます。
灰吹法により鉱石から金を取り出す仕組みは、下記のとおりです。
明治時代に他の金の精練法が広まるまでは、灰吹法による金の採取が一般的でした。
「アマルガム法」は、粉砕した鉱石を水銀と混ぜて金を取り出す方法です。混汞(こんこう)法とも呼ばれます。
アマルガム法により鉱石から金を取り出す仕組みは、下記のとおりです。
アマルガム法は、水銀があれば小規模工場でもコストをかけずに金の採取を行うことができます。しかし、水銀汚染により人体や環境へ与えるリスクが大きく、アマルガム法による金の採取を行っている地域は南アフリカなど、ごく一部です。
「銅の溶鉱炉」を用いると、鉱石から金を取り出すことができます。銅の溶鉱炉は、安全かつコストを抑えながら金を採取できる方法です。そのため、現在の金採取における主流となっています。
銅の溶鉱炉で鉱石から金を取り出す仕組みは、下記のとおりです。
銅の溶鉱炉を用いた金の採取は、人体や環境へのリスクが少ない方法といえます。ただし、大規模な設備が必要となるため、設備投資の余裕がない地域では導入が難しい方法です。
金の採掘について「地球にどれくらいの金が残っているのか」「金が枯渇することはないのか」などの疑問を持つ人は少なくありません。金の採掘に関する疑問を解決し、理解を深めるためには、金に関するデータを知ることがポイントです。
最後に、金の採掘に関して押さえておきたい「金の採掘量」「金の埋蔵量」「金の年間産出量」について、チェックしましょう。
人類がこれまでに採掘した金は、約18~20万トンといわれています。競泳用プール約4杯分に相当する量です。今後採掘技術の進歩により、金の採掘量がさらに増加すると考えられています。
現在でも、中国・オーストラリア・ロシア・アメリカなどを中心に、年間約3,000トンのペースで金の採掘が行われており、世界的に見ても金の採掘量は増加傾向です。
地中の埋蔵量は、各国の合計で約5万トンあるといわれています。年間3,000トンペースで金の採掘を続けた場合、約15年後には金が枯渇する計算です。
下記は、2020年時点における国別の埋蔵量ランキングをまとめた表です。
国名 埋蔵量 1位 オーストラリア 約10,000トン 2位 ロシア 約7,500トン 3位 アメリカ 約3,000トン 4位 スーダン/ペルー 約2,700トン 5位 インドネシア 約2,600トン
出典:U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2021」
金の埋蔵量が多い国は、オーストラリア・ロシア・アメリカなどです。ただし、現在の技術では採掘が難しいとされる金は埋蔵量には含まれていません。海水にもごく少量の金が含まれているため、今後技術の進歩により金の埋蔵量が増える可能性は十分にあります。
2020年時点で金の年間産出量が多い国は、下記のとおりです。
国名 年間産出量 1位 中国 約380トン 2位 オーストラリア 約320トン 3位 ロシア 約300トン 4位 アメリカ 約190トン 5位 カナダ 約170トン
金の産出量が多い国は、中国・オーストラリア・ロシアなどです。金の産出量が多い国の中には、国内情勢の変化や環境規制強化などにより年間産出量が減少している国もあります。
日本における金の年間産出量は約6トンで、他の産出国と比較すると少ないことが特徴です。一方で、日本には携帯電話や電子機器に含まれる「都市鉱山」と呼ばれる金が多いことから、リサイクルによる金の産出に注目が集まっています。
金を採掘できる場所は、鉱山と鉱脈付近の川の2つです。川で採掘された金は「川金」、鉱山で採掘された金は「山金」と呼ばれ、山金の場合は鉱石から金を取り出す作業が必要となります。金を取り出す方法は「銅の溶鉱炉」が主流です。
地下にある金の埋蔵量は、約5万トンといわれています。しかし、金の採掘が進み埋蔵量が減ったとしても、金を溶かして純度の高い金を精製できるため、地上からなくなることはありません。携帯電話や電子機器に含まれる金のリサイクルも注目されています。金の売買で利益を得たいと考えている人は、金の特徴を知った上で、購入や売却を検討しましょう。