最終更新日:2021年07月29日
貴金属と言えば、金・銀・プラチナなどを思い浮かべる人がほとんどでしょう。しかし、今、貴金属の買取市場では、パラジウムが注目を集めています。
パラジウムは、金・銀・プラチナなどと比べると、身近とは言えない貴金属です。そのため、パラジウムとはどのような特徴を持つ貴金属なのか、どのような使用用途があるのか、よく知らない人は多いでしょう。
当記事では、パラジウムの特徴やパラジウムの使用用途、市場価値を解説します。
パラジウムとは、1802年にイギリスの化学者・物理学者であるW.H.ウラストンによって発見された貴金属です。元素記号では「Pd」と表記されます。
パラジウムという名前は、パラジウム発見と同年に発見されていた小惑星パラスにちなんで名づけられました。なお、小惑星パラスの名は、ギリシャ神話に登場する海の神であるトリトンの娘、パラス・アテネに由来しています。
近年の世界全体におけるパラジウムの産出量は年間200トン前後で、金の産出量が3,000トン前後であることと比べれば、多いとは言えません。これは、パラジウムの埋蔵量が金と比べて圧倒的に少ないためです。
また、産出地もロシアと南アフリカの2国に偏っているため、パラジウムは希少価値が高いレアメタルの1つに数えられています。
パラジウムは、他の金属と比べても優れた性質を持っている金属です。パラジウムの主な特徴としては、以下の2つが挙げられます。
○融点が低い
パラジウムは、比較的融点が低い金属です。パラジウムの融点は1,555℃で、鉄の融点とほぼ同じであるため、加工しやすい貴金属として重宝されています。
○水素を吸蔵する
パラジウムは、体積の935倍に相当する水素を吸蔵できる金属です。そのため、水素の貯蔵に役立てられることが期待されています。
パラジウムもプラチナも銀白色をしており、美しい輝きを放つ点において、よく似ています。パラジウムとプラチナは、いずれも白金族元素に分類される金属です。そのため、耐食性に優れている点や、展延性に富んでいる点など、パラジウムとプラチナは多くの共通点を持っています。
一方で、パラジウムとプラチナには、相違点も少なくありません。パラジウムとプラチナの主な違いとしては、以下の3つが挙げられます。
○比重
パラジウムの比重は12.0であることに対して、プラチナの比重は21.4です。つまり、パラジウムはプラチナよりも軽い金属であると言えます。
○硬度
パラジウムは、プラチナと比べると硬度が高い金属です。そのため、パラジウムはプラチナの強度を高めるための割金として用いられることがあります。
○価値
パラジウムはプラチナと比べると、広く価値が評価されているとは言えない金属です。しかし、近年はパラジウムのほうがプラチナよりも高値で取引されることが少なくありません。
金・銀・プラチナといった貴金属は、ジュエリーの素材として高い人気を誇っています。そのため、同じく貴金属の1つとして数えられるパラジウムもまた、ジュエリーの素材として人気なのかと考える人は多いでしょう。
パラジウムは、ジュエリーの素材としても一定の需要があります。しかし、パラジウムは金・銀・プラチナと比べると、ジュエリーとしての需要は低い傾向です。
パラジウムは、主に工業分野で高い需要がある貴金属です。トムソン・ロイターGFMS社の調査によると、2017年におけるパラジウムの工業用途は、92.6%に上っています。
出典:トウシル 楽天証券株式会社「10年間で600%上昇したパラジウムが急落!パラジウム・バブルの崩壊が到来!?」
そのため、パラジウムは産業用金属の1つと捉えることもできるでしょう。以下より、パラジウムの主な使用用途を3つ紹介します。
パラジウムが最も多く用いられているものは、自動車の排気ガスに含まれている有害な化学物質の浄化を手助けする自動車排ガス触媒です。
トムソン・ロイターGFMS社の調査によると、2017年におけるパラジウム消費量のうち、77%が自動車排ガス触媒の材料として使われていました。
2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標の達成に向け、世界中で排ガス規制の厳格化が進められています。そのため、自動車産業におけるパラジウムの自動車排ガス触媒向け消費は、ますます拡大していくでしょう。
パラジウムは、虫歯を削った後に詰めたり被せたりする銀歯用の合金「12%金銀パラジウム合金」の材料としても用いられます。
ただし、12%金銀パラジウム合金を銀歯用の合金として認めている国は、日本だけです。パラジウムは金属アレルギーを引き起こしやすい金属であるため、多くの国が歯科業界に対してパラジウムを含まない合金を用いることを推奨しています。
パラジウムは、ジュエリーの素材としても活躍している貴金属です。
前述のとおり、パラジウムはプラチナによく似ているうえ、プラチナよりも硬度が高い金属であるため、プラチナの強度を高めるための割金に用いられることがあります。「Pt950」という表示があるジュエリーは、95%のプラチナと5%のパラジウムでつくられていることが一般的です。
また、パラジウムはホワイトゴールドの材料として用いられたり、シルバーアクセサリーの割金に用いられたりすることも少なくありません。
なお、パラジウムは傷つきにくいうえに軽いため、近年はパラジウム100%の結婚指輪なども注目を集めています。
貴金属投資と言えば、多くの人が金を思い浮かべるでしょう。しかし、近年ではパラジウムも負けず劣らず、投資家からの熱視線を浴びています。パラジウムの市場価値が年々高まっているためです。
以下より、パラジウムをはじめとする貴金属の買取相場と、パラジウム価格が高騰している理由について解説します。
投資を目的として盛んに取引が行われている市場性のある貴金属は、パラジウム・金・銀・プラチナの4種類です。
メタルズ・フォーカスによる調査によると、2019年度におけるパラジウムの市場規模は2.5兆円となっています。金の市場規模が32.5兆円であることと比べれば、パラジウムの市場規模は大きいとは言えません。しかし、パラジウムの市場価格は2021年には過去最高の3,000ドルに達しています。
なお、2021年時点の日本国内におけるパラジウム・金・銀・プラチナの1gあたりの買取相場は、おおよそ下表に示すとおりです。
パラジウム | 10,900円 |
---|---|
金 | 7,100円 |
銀 | 100円 |
プラチナ | 4,300円 |
パラジウムの買取相場は、金・銀・プラチナなどの他の貴金属と比べても、著しく高くなっています。パラジウムの市場価値が、今後もますます高まっていくと見込まれているためです。
パラジウムの価格が高騰している理由としては、ガソリン車の需要が高まっていることが挙げられます。2015年のフォルクスワーゲンの排ガス不正処理事件によって、ディーゼル車の信用が落ちてからは、ガソリン車の需要増とともにパラジウムの価格が急騰しています。
また、パラジウムの主要産出国であるロシアが2014年にクリミアを併合して以降、アメリカやEUから経済制裁を受けていることも、大きな要因の1つです。ロシアとEU・アメリカの緊張関係は長引くと考えられるため、パラジウムの価格も高止まりが続く可能性が高いでしょう。
パラジウムは、プラチナとよく似た特徴を持つ貴金属です。しかし、プラチナと比べて比重が小さく、硬度も高いという相違点があります。
パラジウムの主な使用用途は、自動車排ガス触媒・銀歯用の合金・ジュエリーの3つです。金・銀・プラチナなどの貴金属と比べ、産業用金属としての需要が高くなっています。
ガソリン車の需要増やロシアへの経済制裁などによる供給不足で、パラジウムの市場価値は高騰中です。パラジウムをより高値で売りたいと考えている人は、ぜひ、買取本舗七福神へ気軽にお持ち込みください。